なぜ中小企業ほどマーケティングができないのか?
多くの中小企業は、業績が上がらないのはセールス、営業活動が不十分あるいは競合に負けているから、もしくは広告宣伝ができていない、知名度が低いからだと考え、そういった「売る」ことにばかり力を入れようとします。
でも、営業に力を入れれば売れるようになるでしょうか?
知名度が上がれば自社の商品・サービスは売れるでしょうか?
先述の通りドラッカーは、マーケティングは企業の目的である「顧客の創造」のために企業が持っている「機能」であり、業績が上がらないのはその企業がマーケティングという「機能を働かせていないから」だと述べています。
そしてマーケティングはセールスとは全く異なり、むしろマーケティングが正しく行われればセールスは無くなる、顧客の方から集まってくると述べています。
そして、マーケティングとはセールスや広告宣伝=企業から売り込むことではなく、顧客にとっての価値(顧客価値)を見つけることだと述べています。
ご存知の通りドラッカーはマーケティングの専門家ではなく、マネジメント=企業経営の大家です。
経営の大家、エキスパートであるドラッカーのこの言葉は大変重いものです。
つまり、中小企業がマーケティングができない、もしくは失敗してしまうのは、中小企業の多くが「売る」ことを最優先し、それを経営の「目的」にしてしまっているからだと言えるのです。
「売る」ことや「売れる」ことは目的ではなく、取り組みによる「結果」です。
企業の目的は「顧客の創造」、すなわち困りごとや問題による欲求(ニーズ)を持った人や社会をコミュニケーションを通して見つけ出し(=マーケティング)、それを満たすもの(顧客価値)は何かを顧客の立場に立って考え出すことです。
この一連の取り組みを全社で行うことこそが「売れる仕組みづくり」であり、顧客価値が明らかになればそれを伝えるだけで「売れる」のです。
これを「理屈だ」「理想論だ」と切り捨てることは簡単です。
確かに「売れる仕組みづくり」は簡単なことではなく、顧客価値を生み出すのは大変な作業です。
しかし、顧客価値に関係なく「売る」ためだけに社員さんの営業力を頼ったり、知名度を上げるための宣伝広告に無駄な費用をかけるのも「安易な」経営だと言わざるを得ません。
そのような安易な経営、つまり顧客価値を見つけるための正しいマーケティングが行われないことで苦しむのは現場の社員さんです。
顧客価値こそ企業の、それぞれの仕事の価値であり、働く原動力である「やりがい」につながります。
マーケティングは顧客のためであり、同時に現場の社員さんのためでもあるということです。
だからこそドラッカーもこのように述べているのです。
「マーケティングは販売よりもはるかに大きな活動で、専門化されるべき活動ではなく、全事業に関わる活動である」
「マーケティングに対する関心と責任は、企業の全領域に浸透させることが不可欠である」
マーケティングは顧客のため、「やりがい」のある仕事のために全社で取り組むものなのです。